デビュー20年を越えて、うたい続ける日々がもたらし、醸成されてきたもの。音楽や医療を通した印象深い人々との忘れ得ぬ邂逅、二つの仕事を並行し守ってきた純然たる音楽への動機。ジャンルレスでユニークな存在であり続けた、その20年の道のりの中で出会った音楽家を集結し、あらゆる思いを注ぎ込んだという記念碑的アルバム。
音楽の本来あるべき根幹が揺らいだコロナ禍、2021年の半年間に、スタジオでのセッションに加え、ロサンジェルスやニューオリンズ、日本の地方都市からのリモート録音も駆使し、13曲中10曲がオリジナル曲というこれまでにない重要な作品となっている。
【はじまりのとき】にお寄せいただいたコメント
生きることがしばしば困難なこの時代。
誰かが全てをさらけ出して想いを語ってくれることがこんなに心を溶かしてくれるとは….。
アン・サリーさんの魂、思想、喜び、悲しみは文字通り私を救ってくれるようです。
この歌声に抱きしめられながら思うのは、今回の作品は歌手としてだけではなく彼女の作家、
プロデューサーとしての類い希な才能が余すところなく刻まれているということです。
ああ、私はまだ泣くことができる、そしてその後は空を見上げることができるかもしれない、
そんな風に人を慰め、人生を鼓舞してくれる素晴らしい作品だと思います。
畠山美由紀(シンガー・ソングライター)
『おおかみこどもの雨と雪』という映画の音楽を作っていた時、昔の歌のように暮らしに馴染んだメロディーが作りたくて、下手なりに歌いながら作曲していたのですが、ずっと頭に浮かべていたのは、アンさんの姿でした。アンさんの歌声を浮かべながら、アンさんが歌っているように音を奏でると、不思議とたくさん曲が生まれました。それはきっと、アンさんが僕にとって歌そのものだったからだと思います。
あれから10年、NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』の音楽を担当することになって、もう一度、アンさんと一緒に奏でたくて連絡をしてみました。今度は、歌詞までお願いして、たくさんたくさん歌っていただきました。毎朝、アンさんの歌声がテレビから流れ、日本中の暮らしがやさしさに包まれたのは、放送が終わってみると奇跡のような日々だったと感じます。
朝ドラは1年がかりのプロジェクトで大変だったと思いますが、その間、まさかアンさんご自身のアルバムも制作されていたとは!!完成した音楽をいただいて、毎日、流しています。1曲目から家がよろこんでます。1歳になった息子もリズムを取りながら笑ってます。僕は、じーんと、家族のこと、そしてこれからの未来に想いを馳せて。アンさんの歌は、人生、そのまんま、なのが嬉しいのです。
高木正勝(音楽家・映像作家)